第1回 初級(過去問題)

※正解:黄色選択肢

工作機械一般

設問1

精度の高い部品を作る工作機械は機械のモトをつくる機械であるので、一般の機械よりも高精度のものにしなければなりません。これにより、工作機械は何と呼ばれているでしょうか?

設問2

工作機械はその機械の工作精度以上の製品は生み出すことはできません。つまり、製品の精度は工作機械の精度を超えられません。この原理を何と呼ぶでしょうか?

設問3

工作機械に含まれないのはどれでしょうか?

設問4

工作機械は海外では広義に解釈して木工機械やプレス(鍛圧)機械が含まれます。日本では狭義で捉え、どのように呼ぶでしょうか?

設問5

今日一般に普及したコンピュータ制御の工作機械に対し、作業者がハンドルを回すことなどで操作する、昔ながらの工作機械は?

ヒント
工作機械とその重要性

私たちの身近にあるスマートフォンや時計などの精密機器、自動車や航空機、船などの輸送機器、人工骨や人工関節といった生体材料に至るまで、金属を材料とする製品はあらゆる分野に存在しています。

これらを構成する部品は、主として素材を削ったり、穴を開けたり(切削加工)して作られるか、切削加工で仕上がった金型によって作られます。このような加工を行う機械を「工作機械」といい、モノづくりのための機械としてさまざまな製品の一部を作りだし、私たちの生活を支えています。工作機械は金属に限らず、セラミックス、ガラスといった非金属も加工できます。

精密で複雑な部品を正確かつ効率的に作ることが工作機械の役割です。全ての機械やそれらの部品は工作機械を通じて作られていることから、工作機械は「機械を作る機械」「マザーマシン(母なる機械)」ともいわれています。

工作機械には、母親の性質が子どもに伝わるように、工作機械(母)が生み出す部品(子)に、工作機械(母)の性質が移されるという「母性原理」があります。つまり、同じ機械で繰り返し部品を作っても「工作機械によって作られた部品は、その部品が作られた工作機械の精度を超えることはできない」という原理が成り立つので、同じ精度の部品を作ることができるのです。

工作機械は国の産業を形成する基幹産業です。昔から「工作機械産業の力が、その国家の産業技術力を示す」と言われます。

工作機械の歴史

設問6

日本が初めて複数台の工作機械を輸入したのはどの国からでしょうか?

設問7

日本で工作機械である旋盤が作られたのはいつ頃でしょう?

設問8

戦後、日本の工作機械工業の技術を高めてきた顧客産業は、次のうちどれでしょう?

設問9

1952年、アメリカで誕生したコンピューター制御による新しい工作機械技術はなんでしょうか?

ヒント
工作機械 進化の歩み(明治以前)

工作機械の起源は古代エジプトにさかのぼります。エジプトの壁画には、ドリルの柄に弓の弦を巻き付け、弓を前後に動かしてドリルを回転させる工作機械の一種である「弓錐(ゆみぎり)」が描かれています。これが、ボール盤の最古の例で、この弓駆動方式はのちに旋盤にも応用され、現在も木工工芸品の製作に使われています。

近代的な工業生産財としての工作機械は、産業革命の推進力となった蒸気機関や紡績機械を製造する必要性から、1770年代にイギリスで発明されました。18世紀末以降、欧米各国で特色ある工作機械が次々と開発されるようになりました。

さて、日本における工作機械の歴史ですが、ペリー来航後、国防意識に目覚めた徳川幕府はオランダ人の意見を聞き入れ、洋式造船・造機技術を導入するため日本の技師や職人らに機械加工法を習得させます。1856年に幕府はオランダ蒸気船会社(NSBM)製工作機械を、長崎海軍傅習所の「轆轤(ろくろ)盤細工所」へ納入しました。これが日本で初めて複数台の工作機械を輸入した事例です。

日本で作られた初期の工作機械は、東芝の前身である民間最初の機械類製造工場「田中製造所」出身の2人が開発したとされています。1875年(明治8年)に伊藤嘉平治が作った全鍛鉄製足踏旋盤と、1889年(明治22年)に池貝庄太郎が池貝の前身である池貝工場の自社設備として作った、英式9フィート手回し式旋盤です。この旋盤は日本の工作機械メーカーが作った現存する最古の工作機械です。


工作機械 進化の歩み(明治後半~昭和中期)

明治後半から国産工作機械は数多く作られましたが、多くの需要は外国製に依存し、第一次世界大戦や太平洋戦争期を除いて、この傾向に変化はありませんでした。

太平洋戦争後の1949年、工作機械の輸入が再開され、業界では産学共同による外国製工作機械の性能分析や政府の試作補助金を活用した製品開発が行われました。性能、品質の向上に努めるとともに、欧米を中心とした海外メーカーとの技術提携により技術導入を行うことで、工作機械の技術力向上を図りました。

また、工作機械の顧客産業であり、品質に厳しい目を持つ日本の自動車メーカーは、戦後まもなく必要な国産工作機械を購入して欠点を指摘し、工作機械会社もその高い要求に答えることで育てられました。このことは今日に至るまで続き、日本の工作機械産業の強みとなっています。

さて、工作機械技術の大きな変革といえば、1952年米マサチューセッツ工科大学(MIT)でコンピューターによる自動化技術、数値制御(NC)技術が開発されたことです。この技術の重要性をいち早く見抜いた日本は、技術の獲得を目指して即座に開発に着手し、1956年NC装置を開発し、NCタレットパンチプレス試作機を完成しました。


工作機械 進化の歩み(昭和中期以降)

20世紀半ば、アメリカのNC工作機械は軍需、宇宙・航空機産業向けを中心とした大型高級機でしたが、日本製NC工作機械は中小製造業など一般ユーザー向けに開発されました。特に1970年代のオイルショックを機に省力化が進み、国内外における日本製NC工作機械の導入は大きく進みました。

NC技術の進歩はその後、一度の部品取り付けで角物工作物を全て自動加工できるマシニングセンターや丸物工作物を加工できるターニングセンター、さらに今日では、数種類の切削加工と研削加工、レーザー加工、そして近年普及が広まっている金属付加製造(金属3Dプリンター)など、新しい加工機能を取り込んだ複合加工機を生みました。なお、「NC工作機械」に対して、作業者がハンドルを回すことなどによって操作する工作機械は「汎用工作機械」と呼ばれています。

数年前からNC工作機械のインターネット対応がさらに進んでいます。IoT(モノのインターネット)により、工作機械本体に搭載されたセンサーから得られたデータを活用し、生産現場の「見える化」を可能にしています。

工作機械は日本工業規格(JIS)では「切削や研削、又は電気、その他のエネルギーを利用して、主に金属工作物の不要な部分を削りとって所要の形状に作り上げる機械。狭義であることを特に強調するときには、金属切削工作機械と表現することもある。」と定義し、日曜大工などで使う手持ち式電動ドリルやグラインダーなどは工作機械に含めていません。

工作機械の市場と統計

設問10

今日、日本の工作機械生産額におけるNC工作機械生産は約何%でしょうか?

設問11

2017年の日本の工作機械生産額はどのくらいでしょうか?

設問12

1982年日本の工作機械生産額が世界一になった理由は?

設問13

2017年の工作機械の生産額において、世界1位の国はどこでしょう?

設問14

いわゆる高級工作機械と中級工作機械の生産は主に5ヶ国で行われています。この5ヶ国とは日本、アメリカ、ドイツ、スイスとどの国でしょうか?

ヒント
日本の工作機械生産額

日本の工作機械メーカーは、高性能でコンパクトにまとまった中小型NC工作機械を主力に開発し、「価格が安く、品質は良く、短納期でサービスも良い」という高い評判を得て、汎用NC工作機械という、新しいカテゴリーをつくりNC工作機械は急速に普及しました。

メーカーが積極的に海外展開を行った結果、NC旋盤とマシニングセンターを中心に工作機械輸出比率は1980年には39.5%(このうち欧米輸出分は約59%)に達しました。工作機械生産額も82年には、当時世界最大の工作機械生産国であったアメリカを抜き生産額で世界一位となりました。

その後、東西冷戦の終焉、日本のバブル経済崩壊、世界的な自動車産業再編、そして2008年に起きたリーマン・ショックと、いく度かの荒波にさらされましたが、1982年から2008年までの27年間、日本は世界最大の工作機械生産国の地位を維持し、生産額は1985年には初めて1兆円を突破しました。

リーマン・ショック後のグローバル経済は、中国を中心とする海外需要が主導する形で回復に向かいました。2011年には東日本大震災による電力不足問題などが経済活動の根幹を揺るがしましたが、工作機械の生産額は3年ぶりに1兆円を超えるまでに回復しました。13年は中国のEMS (電子機器製造受託サービス)向け需要が一巡したことにより1兆円を下まわったものの、14年以降は1兆円を超える水準で推移しています。ここ数年、工作機械生産額のうちNC工作機械の生産額は90%を占めています。また、最近では「地産地消」によりアジアでの現地生産も行われています。


世界の工作機械産業

工作機械は製品により求められる加工水準が異なります。一般的に航空・宇宙、医療関連などの分野では高級機(ハイエンド機で機械の付加価値や価格は最高のレベルのもの)によって加工され、産業機械、自動車、電機、電子部品などの分野では主に中級機(ミドルレンジ機)が使われます。そして、それほどの製品精度を必要としない一般部品加工には低級機(ローエンド機)が使用されます。

世界各地域の顧客産業と主要国の工作機械メーカーが生産している工作機械の傾向から見ると、高級機・中級機は主に、日本やドイツ、アメリカ、スイス、イタリアなどが主に手がけています。中級機から低級機は台湾、韓国、中国、インドなどが作っています。なお、一部の欧州や日本メーカーは、中国をはじめとするアジアでの生産機を中級機の廉価版とした、新興市場向けのエントリー製品も作っています。

日本の工作機械の生産額は1982年から2008年まで27年間連続で世界第1位でした。しかし、09年は08年後半からのリーマンショックによる景気減速の影響を大きく受け、中国、ドイツに続く第3位にとどまりました。その後、中国を中心とした新興国の旺盛な設備投資に支えられ、10年はドイツを抜き第2位に回復しました。

以来、中国が1位、次いで生産額が拮抗する日本とドイツが2位と3位を占めています。18年5月にGardner Business Media Inc. が集計した「2017年世界の工作機械生産統計」によれば17年は日本が2位と報告されています。

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