第4回 初級 基礎資料 その4

日本の工作機械受注とNC工作機械生産

(1)工作機械受注《問題9 参考》

一般に製造業が増産を行うには機械を購入して準備(設備投資)しなければならないため、機械の受注は企業の実際の設備投資に一定の先行性を持っているとされています。

内閣府の「機械受注統計調査」は主要機械等製造業者280社をベースに、設備用機械類の受注(外需と内需を合計)状況を調査し、公表しています。

毎月実施される実績調査は、2ヶ月後の中旬に発表され、官庁統計の代表的な景気の先行指標としてよく知られています。

一方、(一社)日本工作機械工業会が、会員企業の内外需の受注額をそれぞれ集計した「工作機械受注統計」は、グローバル市場におけるあらゆる産業の設備投資動向をあらわし、個人消費といった景気指標に先行した動きを示します。

この統計は前月の受注額を速報と確報として翌月発表しています。翌々月公表する内閣府の「機械受注統計調査」に比べ早期に市況を把握できることから、設備投資の動向を最も早く表す指標と位置付けられています。

(2)工作機械受注推移《問題11 参考》
表3:工作機械受注額の推移 出所:日本工作機械工業会

工作機械受注額は好不況の大きな波を繰り返しながら推移してきました。2000年代初頭は不況期にありましたが、2004年に1兆円を突破すると2008年まで5年連続で1兆円超えを記録し、過去最高の好況期となりました。

しかし、2008年9月に起きたリーマン・ブラザーズの破綻が引き金となった世界的な金融危機と不況を受け、2009年受注額は前年比約65%減少し約30年前の水準にまで受注額が激減しました。

リーマン・ショック後の2011年には受注額が2008年とほぼ同水準に回復しました。

そして、アベノミクスによる円高・株安の是正が進み企業収益が改善したことに加え、補助金や税制優遇などの政策支援で設備投資が活発化し、2013年から2015年まで内需は増加しました。また、外需は欧州債務危機やウクライナ問題などのリスク要因もありましたが、2014年にはスマートフォン関連電子機器やスマートフォンのアルミニウム筐体加工用機械の旺盛な受注が中国を中心としたアジアで起こり、初の1兆円超えとなりました。

2016年は、円高の進行のほか、英国のEU離脱決定やEMS関連需要の剥落、中国経済の成長鈍化、国内における補助金の採択待ちなどにより、内外需ともに減少し調整局面となりました。2017年と2018年の受注額は2年連続史上最高額を更新しました。その背景には、これまで需要の牽引役であった自動車産業に加えて、東京オリンピック・パラリンピック関連インフラ投資、建設機械、ロボット、航空機、風力発電機という様々な業種での設備投資が内需・外需ともに増加したことがあります。

また、自動車産業も従来の基幹部品(パワートレーン・車体等)に加え、電動車や自動運転支援システムに対応した、車載電池、モーター、半導体、電子部品など様々な製品の金型や機械加工の需要が増えました。

しかし、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界的に経済活動が停滞して、10年ぶりに1兆円を下回る水準まで低下しました。

(3)日本のNC工作機械生産《問題12 参考》

日本の工作機械メーカーは、高性能でコンパクトにまとまった中小型NC工作機械を主力に開発し、「価格が安く、品質は良く、短納期でサービスも良い」という高い評判を得て、汎用NC工作機械という、新しいカテゴリーをつくりNC工作機械は急速に普及しました。

表4:工作機械生産高とNC機生産比率推移(出所:経済産業省資料を基に日工会作成)

そしてメーカーの積極的な海外展開の結果、NC旋盤とマシニングセンタを中心に工作機械輸出比率は1980年には39.5%(このうち欧米輸出分は53.4%)に達しました。工作機械生産額も82年には、当時世界最大の工作機械生産国であった米国を抜き世界一位となり、生産高の53.9%がNC工作機械になりました。

その後、高精度加工の需要増を背景に80年代~90年代にかけて、NC工作機械の生産比率は上昇を続け2000年には9割水準に達しました。2000年以降その比率は、年によって増減はあるものの概ね9割水準で推移しています。複合加工機や5軸制御マシニングセンタなど高度な加工を行う工作機械が普及している一方で、NCを必要としない加工需要も一定程度存在しています。

工作機械の輸出管理《問題20 参考》

先進国の高度な製品や技術が大量破壊兵器などを開発する国やテロリスト等に渡った場合、国際的に大きな脅威となります。この脅威を未然に防ぐのが、「核兵器関連」「生物・化学兵器関連」「ミサイル関連」「通常兵器関連」に分類された輸出管理の国際的枠組み(レジーム)です。先進国を中心とした参加国はそれぞれの枠組みに準拠して、たとえば日本の外為法、米国の輸出管理規則のような法律を運用しています。

工作機械やその技術は「核兵器関連」や「通常兵器関連」(注)の軍事用途目的に転用される可能性があるため、製品の性能や輸出相手国などに関する詳細な規制が定められ、規制に該当する製品や技術の輸出には、経済産業省の輸出許可が義務付けられ厳格に管理されています。

また、先端技術を持つ企業、大学、研究機関等からの、技術・データや製品等の流出は国の優位性や安全保障に大きな影響を及ぼすため、これに対処するための経済安全保障の重要性が近年高まっています。

(注)通常兵器:一般に大量破壊兵器以外の武器を意味し、地雷、戦車、軍艦、戦闘機、大砲、ミサイルから、けん銃などの小型武器まで多岐にわたります。

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