代表的な工作機械は大きく以下に分類できますが、この他に「砥粒」を水に混ぜ水圧により加工するウォータージェットなどもあります。
以下の章に、上記分類のうち最も代表的な汎用工作機械を例に取るとともに、今日広く使われている数値制御(NC)工作機械について、それぞれ概要を説明します。
図4はNC旋盤と横形マシニングセンタを例にした、工作機械の基本構成です。横形マシニングセンタを例に取れば、主要構造要素のベッドとコラムは、ベッド上面に設けられた案内面をサドルが、コラム側面の案内面を主軸頭が、切削により発生する抵抗力、振動や自重に抗して摺動する動きをしっかりと保持するとともに、切削工具と工作物が高い精度で相対運動できるような動きの基準となっています。(構造の異なる「立て形マシンングセンタ」ではテーブルやサドルがベッド案内面上を摺動します。)
産業機械などは、「壊れないこと」,「安全であること」,そして「正しく機能すること」を念頭に、それぞれの機械構成部品にはどのような荷重が加わるのか考慮して設計しなくてはなりません。そのため、設計には適切な材料を使い、強度計算が重要になります。このことを「強度設計」と言います。
さて、工作機械では第1章の「母性原理」にも述べた通り、作り出される部品に工作機械の精度が転写されます。そこで工作機械には変形、振動の起きにくい剛性(注1)がある構造とするため「剛性設計」が行われます。
剛性設計には、工作機械を一定の荷重(注2)や切削力による曲げやねじりなどの変位をできるだけ小さくして静的剛性のある構造にすること、急加速・停止時に起こる慣性力や切削等から発生する振動(注3)による動的変位が起きにくい動的剛性がある構造にすることが必要です。
ただし、剛性は図5のベッドやコラムなど機械を構成する単一要素だけでなく、これらの要素同士を結合するための要素(例えば、コラムをベッドに取り付けるボルト、軸受や送りねじなどの駆動要素)にも必要です。そして、さらにはそれらを組み合わせた工作機械全体にも剛性が必要です
以上の剛性に加えて加工精度に影響を及ぼすのが熱変形です。熱変形は熱剛性と呼ばれることもあります。
熱変形の主な原因には、加工により機械上に残る切屑からの熱、モータなど機械稼働で発生する熱、そして環境室温変化があります。これらの熱源による機械の部分変位が重なり合い工作機械全体の熱変形になります。そこで、今日の工作機械ではどのような熱源の影響を受けても熱変形を最小にするため、機械構造上の設計配慮が行われています。
旋盤は「丸物」と言われる、円板状または円筒状工作物の加工に使われます。旋盤加工では、切削工具は固定され、工作物が回転します。そして、図9のように切削工具(バイト)を回転する工作物の半径方向に切り込み、軸方向に動かす(送る)ことで加工します。この加工を「旋削加工」と言います。
工作物は図7のように、主軸につけられた「つかみ」装置であるチャックで保持されます。ここで、主軸とは工作機械の主要部の一つで、工作物や切削工具が取り付けられモータで回転される軸を指します。
工作物を旋盤チャックに取付ける場合、図7のようにチャックハンドルを用いて、チャックの爪を開閉して工作物を取り付け、固定します。なお、チャックには爪が4個の「四つ爪チャック」もあります。一方、切削工具であるバイトは図8のように、前後左右に動く刃物台にハンドルとボルトネジで固定されます。
心押台(図9)は、ベッド上の主軸台対面にあり、ベッド上を長手方向に移動することができます。心押台の心押軸にはセンタを取付けて工作物を支持したり、ドリルを取付けて穴加工を行うこともできます。また、長い工作物については、図9 のように主軸と心押し台で両端を支持しますが、振れ止めを併用して工作物を支えることもあります。
図7は一般的な普通旋盤ですが、旋盤には大きな重量物の加工に用いられる、主軸を垂直にした形状の立旋盤もあります。